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—他の病院から浦河に来て、患者さんへの接し方に変化などはありましたか?

今村:この街は、病院の診察室を出て買い物に行ったら、さっき外来で話していた人と会うということがあり得るんですよ。都会の場合、それは無いんですよ。この街で医者をやるには、街で患者さんと会ってもお互いに変な思いをしないように生活していく必要があるんですよ。

都会でやっていたときは外来に来る人も全然知らない人だったけれども、浦河では、すごく近所の人だったり、数日前にべてるで一緒に食事した人だったり、病院以外で接する機会が多い人と話しをしなくちゃいけなくて、そういう時に医者の役割をやらなくてはいけないなかで、自分のスキルはすごく上がっていると思います。

白衣を着るということだけでお医者さんができちゃう時ってあるんですよね。でも、今は違うなと思います。友達とか、自分が大切だと思ってる人にも同じセリフが言えるかなと思ったときに、自分が逃げるためにとか、誤摩化すためのセリフは言えなくなってくる。じゃあ、自分の友達とか本当に大切な人にだったら何て言うかということが、ここなら自然にできるようになるんですよね。そういう過程がとても大事だったですね。精神科医としての仕事の仕方とか患者さんとの向き合い方が大きく変わってきたと思います。それは辛くなったとか難しくなったというよりも、肩の力が抜けたというか、精神科医として働く事が生活の一部のなっている感じがします。

—べてるには「三度の飯よりミーティング」、「勝手に治すな自分の病気」、「病気の半分は仲間と治す」、「社会進出」など様々なキャッチフレーズのもとに地域で当事者が活動しています。そういう当事者活動の場に対して、例えば薬の出し方ひとつにしても、医療の側がどう取り組んでいくのかというテーマがあると思います。

今村:昔、浦河の精神科のお薬の量を統計を取って調べたんですよ。外来の統合失調症の患者さんを全員集めて飲んでいる量を調べたら、全国平均の3分の1くらいだったんです。他の施設で同じことをやっている人がいないので安易に比較はできませんが、少なくとも東京と福岡でこのくらいの量を外来で出していますという所と比較しても少なかったので、少量で済んでいると思うし、種類なども一人に対して一種類だけで済んでいるように思います。

私達の強みは、例えば幻聴の問題に対しても、お手伝いできることが薬だけではないということだと思います。別の土地で幻聴がつらいという人に対しては薬しか対処法がないのであれば私も薬をたくさん使って、他の人と同じようなことをしていたと思います。しかし、大事なのは、医者の出す薬がその人の人生を握っているというのはあり得ないということです。それらのことは、べてるが教えてくれたことですね。

精神科医になったときは、べてるでラーメンの出前を楽しみにしながらメンバーと一緒に作業をしたりするとは思ってもみなかったですし(笑)。私は休日にはひだまり(べてるのメンバーが住む共同住居)に行ってみんなで食事をしたりしていますし、出張がない休日にはほとんどひだまりにいたりして、医者になったときはこういう生活になるとは思っていなかったんですよね。

だから、精神科医として求められているものというか、私たちが医者ってこういう感じだろうなと思っていたことと全然違うことが起るんですけど、それは何でも同じで、そこで落ち込むか、面白いなと思うか、そこはその人の資質だと思うんですけど。それが降りていく生き方というか、その人の人間性がここでは嫌でも出てきますよね。隠していたものがさらけ出されていくのが浦河だと思うし、それが嫌ならここには向いていないと思います。



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