—浦河の外から来られて、例えば川村先生の診察などを隣で見ていてどうですか?
今村:周りは特異な目で見ているというか、川村先生のキャラクターだからできるとよく言われるんですが、私は川村先生しかできないとか、あのキャラクターがあるから来る人が良くなってるとは思っていなくて、むしろ再現性があるもので、考えてやっていることだから、川村先生のやっているなかで良くなるポイントを押さえて、こうゆうふうにしても意味のないやり方とか、こうゆうふうにしても良くないやり方をやらなければ、誰でも同じ様にできると思っています。
私は最初に来たときはビックリしたんですよ。川村先生の外来の隣に小さな占い部屋みたいなところがあって、そこが私の外来の部屋だったんです。はじめは患者さんが少なくて暇だったんで、川村先生の外来を聞いていたんですよね。他の土地だったらやっかいだなと思われるような女性の患者さんが来ていて、川村先生に泣いて話してるんですよ。その時、川村先生がその女性に言った言葉に、書類を書いていた手が思わず止まってしまったんです。すごくビックリしてしまって。
あぁ、これが精神療法なんだなって。ただ話しをしているのと精神科の面接とは一見すると似ているように見えてしまうことがあるんですけど、全然違うということが、頭で理解できたというよりは気持ちで印象に残ったんです。それ以来、川村先生の外来をこっそり聞く私の習慣が出来ました(笑)。だんだんそれがエスカレートして、時々メモもとるようになって。
それから「あの場合どう言うんですか?」とか「今言ったセリフすごくいいと思うんですけど、どういうことを考えていたんですか?」と聞くんですけど、本人はあまり考えてなくて、スポーツみたいに体でやっている部分があって、ポイントは押さえつつ口から自然に出ているんですよね。
よく聞いていたら、こうあるべきとか、精神科医はこうでなくてはいけないとかはあまり考えていないのかなという感じがします。むしろ、こういう言い方は、とっくに親とか教師とかから言われてることだから、精神科医が注意とか指導的なことを言っても意味のないことだよとか、じゃあ他にどういう言い方があるのかということを大事にしていたりだとか。
—べてるは川村と向谷地のキャラでやれているんだとよく言われます。しかし、川村先生自身は、とても科学的にやっているのだと言っています。科学的であるということは、他者に伝達することが可能だということです。今村先生はまさにその部分を日々感じておられるわけですね。
今村:そうですね。それも都会の頭のいい人にしか分からないのもではなくて、それこそ幻覚妄想状態の人でも、知的障がいの人でも、そもそもコミュニケーションがうまくできない人が多く外来に来ますから、シンプルで分かりやすい言葉というものがたくさん生まれていると思うんですよね。川村先生自身は忘れていますが(笑)。
それをメモしていくうちに、考えていることが分かってくるし、その言葉をマネするだけですごい威力があるんですよ。あるアルコール依存症の方のケースで、保健師さんも薬剤師さんもワーカーさんも対応に困っていて、川村先生がかつての主治医でその人について前にコメントしていたことがあったから、その川村先生の言葉をそのままその人に言ったら、場の雰囲気が和んだんですよ。言葉の力ってすごいなって。これが、お薬とか入院とかでは、こういう結果は得られないだろうなって。言葉によって、その人の認知を変えたり、多くの人の気持ちを変えたりできるんだなって。やっぱり面白い分野だなと思いますね。
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