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下野:そう、べてるに行くと具合悪くなるんですよ。

向谷地:そう、逆なんですよね。下野君があのグダグダしてますよね、あのグダグダ、グチグチ、ネチネチ、時々こうベトベトとかね。で、そんな状態になった時に「下野君、彼ちょっと調子悪そうだからケア頼むよ」って頼むんですよ、そしたらね、元気なんですよ。で最近思ってるんですよ。あ、下野君は暇疲れだって。

下野:常に自分よりも具合悪い人を面倒見て自分が調子よくなる。

向谷地:そうそうそう。ねぇ。

下野:話が会うんですよね、具合悪い人同士だと。

向谷地:あの、暇疲れですから。一緒に住んでる住居のメンバーが最近すごいぱぴぷぺぽ状態で家財道具全部道路にばら撒いて、タンス粉々にしてね、僕が彼の家に行った時にあんなに家財道具一杯あったのにいつの間に引っ越したんだろうって。もぬけの空で、カーテンも外すしカーテンレールも全部外して解体作業やってるんですよ。その彼を下野君が頼むねって言ってねぇ、ケアをし始めたら、下野君頑張ってだんだん元気になってきたんだよね。

下野:元気になってきたっていうか、元気になるしかないんですよね。

田口:ははは。

向谷地:そういう感じですね。

田口:ねぇ。

向谷地:本当徹底的に暇疲れなんですよ。

田口:なるほどね。

下野:働いていると、そんなに病気になんないんですよね。働くなるなると必ずなんか近所のおばさんの目が気になってきたり、やっぱ精神障害者だからこういう見方されるのかなとか、そういう悪い方、悪い方に行くんですよ。

田口:うーん。うちの父もね、酔っ払ってよく家財道具を道にばら撒いたりとか、家のガラス窓全部叩き割ったりとかしてよく暴れてましたけど。私はまだその一番ピークだった頃は20代の後半とか30代の頭だったし、本当になんていうのかなそれをね、笑えなかった。なんか笑えるっていうのも変だけど、常にこれが一番最悪っていうか、なんて言うのかな、それを順調だと思えるような意識の持っていき方を知らなかったんですよね。そういう風に教えてくれる人もいなかったしね。
何とかしなきゃっていう気持ちしかなかったわけ。でも何とかってなんなんでしょうね。何とかしたいってその一念ばっかり。物凄く苦しかったです。でもそれはあたしも苦しかったけど、父も苦しかったろうなっと思って。常に何とかされたい人な訳、されなきゃいけない人として扱われ続けて来てね。

向谷地:したらね、私たちも決して面白い事があって笑うっていうよりも、例えば今回その一緒に住んでる住居のメンバーがちょっと調子悪くなってこう、幻聴でこの住居から出て行け、出て行けって幻聴が聞えるもんだから、「出て行かなくていいよ、いて欲しい」って言ってもね、幻聴さんの方に私たちが逆に負けちゃって、彼は一生懸命引越しの作業をしてるわけですよね、あの家財道具よく一人で運ぶよね、あれすごいパワーだよ。

下野:すごいですよね。

向谷地:で、最後は家財道具を全部外に出すだけじゃなくて自分のタンスをこう、粉々に、木っ端微塵に、チップなんですよ。どうやったらこのチップにできるんだろうって、あのベニアとか板、木をね。あれなんか粉砕機にかけたような粉々にしてるんですよ。
あれはねすごい才能だよね、ってみんなでねこう唖然として集まったメンバーが、これすごいよね、ここまで細かく砕くなんてすごい才能だよねって言うと、やっぱりみんな笑うんですよ。やっぱりそういうことですよ。

田口:そういうことですよね。

下野:それを仕事に生かしていく。

向谷地:もう笑うしかないですよね。彼解体をやったら絶対食べていける。

田口:はははは。

向谷地:そういうことですよ。

田口:だね。いや、学びましたよ、その辺は本当にべてるに行ってね。思考の逃げ道っていう言い方私はあんまり好きではないんですけどね、どうしても自分の方を同じ考え方の中で一杯一杯にしてっちゃう傾向があるんですよ。家族の問題とかできつくなると、あの何とかしようという、その見えない何とかに向かって、方法のない何とかに向かって、自分と相手を責め続けるみたいなことをやってしまいがちなんだけど、そこから一歩抜けるっていうかね。うん。諦めちゃうっていうかね。それでも口ではうまく説明できないんだけどね。べてる行って実際に見るとすごく体感できるんですよね。

向谷地:その辺は、深刻にならないっていう、まぁひとつの知恵だと思うんですけどね。私はそういう意味では、28年経って考えてみると、いわゆるとくにこの精神障害っていうのは非常に否定的なまた、非常に恐怖する、不安とか何か捉えどころの無い困難がね、そこにあるように思って、やはり重苦しいテーマとしてこの精神の病の出来事を語られがちだと思うんですけど、私はやはり、病を持つ事の意味っていうのが少なくとも私たちの中ですごい変わったなっていう感じするんですね。

田口:うんうん。

向谷地:まぁそういう面では、最近とてもいろいろな苦労抱えて、私たちに最近繋がってきた福島さん。ホント典型的で、福島さんも苦労してきましたよね。福島さんが一番苦労してきたことはどんなことですか?

福島:15年間で救急車を300回乗りました。

向谷地:ね。この15年あまりね救急車300回以上乗ってきたんですね。これも大変な作業ですよ。救急車300回も呼んで。

田口:へー。

向谷地:おそらくこれは誰か統計を取ってないですか、個人での日本記録更新。

田口:ははは。トップランキングですね、かなり。





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『べてるの家から吹く風』(いのちのことば社)
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