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田口:あんねぇ、親やってると、どうしてもね良い親やろうとしちゃうんですよ。で、主婦やってたら良い主婦やろうとしてしまう。まぁ人間やってるから良い人間やろうとしてしまう。
いい人間っていうのはどちらかというと強い人間だというイメージがあるのね。しっかりしてて、ちゃんとしてて、まともで、普通でっていうのが私の考えてたあのあるべき人間像だった訳。で、これはもう子供の頃から割りとずっとそう思ってきたのね。
だからそこから落っこちちゃった家の兄っていうのは、私にとっては弱い人間じゃなくて駄目な人間だったの。で、私はだからその駄目な親っていうのは、駄目な人間になりたくない親なんですよ。はははは。あのね、どう言ったらいいんだろ、本当にこう弱いっていうのは、うーんあの、正直っていう事に近いよねぇ。取り繕わないっていうのかな私の中では。そんな感じなのかなぁ。うん。
向谷地:私はですねあの今回亡くなった母親とか父親からまぁよく子ども達、若かりし頃の子ども時代の話をよく聞かされたんですよね。特に戦時中の話を聞かされてですね、その戦時中にそんな事合った、あんな事があった、さっき言ったように空襲を逃げ惑った悲しい青春時代をですね、そういう風に過ごした話を聞かされて、その中での挫折体験、失敗体験をいっぱい聞かされて、なんとなくですね。
なんで母親があんな風に一生懸命言ってくれたかわかんないですけどね、それを聞いた時に私はどんなこう不平不満だとか、親にこう怒りが、文句言いたい時があったとしても、侵してならない親の尊さみたいなのがある様な気がして。それはやっぱりそういう事を聞かされて育ったっていう事から生じた私のこうひとつの子どもとしてのわきまえの様な気がするんですよね。
ですから、いろいろな失敗とか、一見そんな事はあまり言いたくない様な事も、やっぱりちゃんと誇りを持って生きた証として子どもに語れるっていうのは、とても先に歩んでいる先輩としては大事な作業なんだなと思ったんですね。
私が小学校の時、だんだん社会がわかってくるといろいろ不安になったり、戸惑ったり、特に中学になって大人の入り口に立たされた時に、さっき言ったように体罰を受けたり、同級生との人間関係の苦労がだんだん大きくなってきた時に、大体世相は世相、大学紛争の時代でしたから、考え始める訳ですね。すると、どうしても10年、20年、30年生きていくって事がどうも想像つかない訳ですよね。でも親は50年、60年生きている。なんでこんな不安な事とか、困った事とか、行き詰まりがありながら大人はやり続けていられるんだろう、子どもっていう今の現実と大人っていうその彼方のですね、間のプロセスが全然見えなかったんですね。そういう傾向があるんですよ。
ですから、それが結果として良かったかもしれませんけど、やっぱり子ども達にはちゃんとそういう自分の子ども達とか、僕はもう忘れ物の天才で、いつも忘れ物ばっかりしてて、先生に叱られてたりとか、そういう事ってちゃんと伝えていくべき。すると子ども自身がいろいろな行き詰まり、本にも書きましたけど、長男が忘れ物ばっかりして学校の先生からあの朝電話がきて、お父さん息子さんに忘れ物しない様にちゃんと言っていただけますか?って言われた時に、僕はあの息子に忘れ物しすぎるって電話来たぞ、なんで忘れ物するんだっていう事は言わなくて、お父さんもそうだったと。で、今もそういう事は乗り越えられてないんだと。だから諦めろと言ったらですね。
会場:笑
向谷地:僕はさっきランディさんと同じで、正直に。
田口:私、小学校の頃机の中汚くしてたんですよ。そしたらうちの娘もすんごい汚いのね。授業参観に行ったら。あー血だなぁと思ってね。しょうがないなぁ、あんたも私と同じだねって言ったらすごっく嫌がって。もう一回それからきれいにしましたね。
向谷地:物を忘れる、物忘れっていうのはだから向谷地家の家紋の様なものぐらいなものだから。これはもう大事にしなきゃならない。
田口:あとさぁ、そうそうこの頃うちの娘がもう小学校高学年になってきたから本が読めるようになってきて、時々家でこっそりあたしの本を読むんですよ。こないだあたしのエッセイを読んで、なんて言ったかと思ったら、「お母さんも苦労してるんだね」って。(笑)
向谷地:大事なことですよね。
田口:あはははは。なんかすごいものすごく複雑な気持ちだった、なんとなく。恥ずかしい。
向谷地:ですから自分の行き詰まりや苦労にちゃんと誇りを持てるっていうか、繋がりを持てるっていうのはとても大事な事だっていう風に思いますね。ですからこれは是非行われるべき事。僕はね結婚して子どもが産まれる時に是非それをやりたくてワクワクしたんですよ。自分の子育ての中にそういう実験をね。
田口:入れてみたくてね。
向谷地:弱さの情報公開とか。そういう自分の失敗体験を子ども達に言いたくて言いたくてですね。
田口:うん。
向谷地:まぁ、そうやって実験している最中ですけどもね。
田口:うふふふ。あはははは。
向谷地:実験の成果がここに今勢ぞろいしてるんですけど、まぁどんなになるかは。
田口:みんなすごく複雑な感じしてる。(笑)
客:母が当事者で、母は病院に行きたがらないので正確な病名がわからないんですけども、強迫性障害の不潔恐怖症って本人は言ってます。日常生活にすごく支障があるくらいの程度で。爆発もするのでちょっと際どいんじゃないかなと、私も思ってるんですけども。
さっきから苦労を笑うしかないって言うところが今日のテーマになっている様な感じがするんですけど、私はそういう風にできたらどんなにいいかなぁと思うんですが、まず本人は自分のこの苦しみを笑うなんてできないっていう事を随分昔に言ってた事があって。何かアドバイスが頂けたらと思っております。
田口:似たような感じでした私も。本当に。30代の後半兄が亡くなるまで。だからとてもよくわかります。お気持ちは。でも、兄が亡くなった時、兄が引きこもりの末に餓死をするという、まぁそういう死に方をしたんですが、その後にあのまぁすごくいろんな事をね、考えて。で、どうしてこんなに苦しかったんだろうって思ったんですよ。私は何に苦しんでたんだろう、一体兄が亡くなった瞬間に、その苦しみっていうのから解放された訳なんだけれども。
私と兄は別に長く一緒に住んでたわけじゃなくて、大変離れて住んでた訳ですよ。私は東京で働いていたし、引きこもってた兄は私と一緒に同居していた訳ではなくて。兄と一緒に住んだの何ていうのは兄が死ぬほんの半年くらいの間だけなんですよね。もう会ってない時間ていうのは、別に死んでようが生きてようが別に私の目の前にいないわけだから同じなわけじゃないですか。つまり、私は兄と離れて暮らしてようが、一緒に暮らしてようがとにかくあの兄の不幸が自分の不幸とくっ付いてると思い込んでたんですよね。ひとっ時もその事から逃れられないような苦しみを自分が勝手に作って引き受けてて、それで苦しんでた訳。今目の前にいない訳だから、そんな事を考えなければ別に同じな訳ですよ。兄がもう、亡くなってても生きてても。
だけど、生きているときは兄の不幸が私の不幸だった。どういうわけか。だけどね、兄の、お兄ちゃんの不幸もお父さんのアル中も、私の不幸じゃないんですよ。私元気だし、けっこうポジティブだし、まぁちょっとうっとうしいくらいなんていうかな、健康に生きていたりするわけですね。その私と、うちのお兄ちゃんとお父さん、アル中のお父さんっていうのは別の人間なんですよ。
だけどね、そこがなんか分けられなかったんですよね。それはやっぱり一番自分にとって苦しかった事で、そして分けられない私の存在っていうのが相手にとっても本当に負担だったようです。そうですよね、下野君。
下野:確かにね。
会場:笑
向谷地:これは下野君の専門分野ですよね。
田口:ねぇ。下野君の専門分野ですよ。
下野:親が亡くなったんで。
向谷地:親の苦労です。
田口:あのねぇ、下野君が統合失調症で幻覚なんかで監視されてると、私が不幸になっちゃう訳。だったらわかる?下野君の家族だったら。
下野:うん。でしょうねぇ。
田口:でねぇ、すごく下野君が不幸になればなる程私も不幸が移ってきちゃうわけ。
下野:そう。
田口:家族だと。
下野:そうですよね。
田口:迷惑ですか?
下野:あーそうですね。あーどうだろうなぁ、僕の親が亡くなった話ですよね。親亡くなっちゃったんですけども、あんまり関わりが無かったんですよね。僕の場合は。だけど多分その前後には、すごいひっちゃかめっちゃかやってて。なんて言うんだろ、自分のせいでこの人が心配して、で自分の方が具合悪いのにこの人は具合悪くないのに心配されると、もっと具合悪くなる。
田口:あははは。
下野:あの、だからあのさっきの住居で一人で引越し状態になってタンスとか木っ端みじんに粉砕した人とか。やっぱあそこぐらいまでやらしてもらうと、思いっきり思う存分こうスポーツ感覚で病気ができる。
会場:笑
下野:そう。あの、途中で心配とかされると思いっきり病気できないんですよね。毒を出せないっていうか。うーん。ただ出す場所が電車の中とか、東京駅とかそういう風なとこだとまずい事になっちゃうけど。場所を選べば、ねぇすごい病気出した方が後々いいですよ。はい。
田口:うん。膿と一緒でね。
下野:はい。はい。
田口:うん。
下野:そうですね。
田口:で、あの無用な家族のなんだろ、一緒に病気出すような感じっていうのはそれをこうわかるとセーブしちゃう訳ですね?それをね。
下野:そう。それにこう深刻になってくるし、将来とか考えるし。うーん。そう。で、昔の事も知られてるし。
会場:笑
下野:こう、がんじがらめっていうか。そうですね。思考のがんじがらめっていうか。だから、結局同じ家族でもやっぱり病気と病気じゃない人だと話が合わないんですよね。
田口:あ、そうなんだよね、結局ね。そうなんですよ。
下野:だから同じ趣味の人と話してた方が、話は花が咲く。
会場:笑
下野:まともな話をしたかったら、家族と話してくださいって。だからまともな話をしない内は相手にしない方がいいですね。
田口:へへへへ。あはははは。
下野:そうです。疲れるだけですよ、本当にもう。と思いましたね。はい。
向谷地:という事だそうです。まぁ、どんな事があるのかどうかわかんないんですけど、まぁきっとお父さんも一緒になんかこうピッタリこう一緒に苦労してくれてるみたいですから、娘さんが一日も早くそこから離脱して、自分の幸せを追いかけてくださいという様な話なのか。
田口:はははは。まぁ、人の幸せより、自分の幸せですよ。頑張ってください。
司会:はい。長時間ありがとうございました。それではこれを持ちましてですね、『べてるの家から吹く風』出版記念、田口ランディさん、向谷地生良さん、トークイベントの方は終了させていただきます。
会場:拍手