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向谷地:不幸なんですよ。向谷地生良とかね、こういう親の下に生まれたことは幸いだと思ったら間違いだって。やっぱりこうちゃんと情報公開しなきゃいけない。
だから私今でも言うんですけど、今この時代に今子どもやれって言われたら私は生きていく自信がないですよ。ホント自信がない。そういう自信のない時代の中で今子ども達は生きなければならない。これはしんどいことなんですよね。まぁ昨今いろんな事件とかね、ありますけど、ね。

田口:ね。なんかやっぱり順調の意味をもうちょっと、なんていうのかな、べてる的に考えれば楽になる人沢山いるのになって。
私は、べてるの家に関わるようになってから感じているのは、絶望とか諦めとかって物凄い救いなんだなっていうかね、その向こう側にあるもっと広い、なんかこうなんだろうな、そこを立脚点にしか立てない人との繋がりとか希望とかっていうのが、そこに立った時に初めて見れるんだっていうことをね、私すごい感じますね。

向谷地:ですから、私達は本当に難しい事抜きにしてその場で自分の弱さの情報公開をし始めるとすると、みんな基本的に助け合ってくれる、助けてくれる、繋がるんだっていうそういう人はそういう習性がある。

田口:そうですね。うん。

向谷地:で、こう力とかパワーとか独りよがりの成功っていうものからだったら人は離れてしまうけれども、弱さって大事だと思うんです。

田口:例えばずっと旅行なんかしててね、自分はなんていうんだろう、集団のなかでさ、やっぱりこうきちんとやれる人間であろうって頑張る傾向があるじゃないですか。
現代人って私も今回ずっとここに来る前ね、ずっと集団旅行をしてきたんだけども、そういう中で年下の子達とか沢山いるし、なんかいい大人であろうとか頼れる自分であろうとかっていうすごくいい人傾向が強いんですよ。だけど、それをやっていくとなんかねぇ、心が繋がっていかないっていうか、こうみんなが気持ちをほぐしてくれないんでね。
やっぱりねすごいなんか下痢便になっちゃって、お腹が痛いとかトイレから出て来れなくなったりとかそういうドジを繰り返して行くとね、物凄くこう人と人との繋がりが次第に深くなっていくっていうかね、まぁ駄目な自分とか弱い自分を人にさらすのって大人になればなるほどなんか出来なくなっちゃうんだけど、うん、それをやれる大人を子どもとか若い子って決して軽蔑しないよね。

向谷地:だと思いますね。私は子育ての中で大事にしてきたのはやっぱり大人としての弱さの情報公開を子ども達にちゃんとして行くっていう、それは親の責任だ、大人の責任だなっと思ってるんですけどね。
最近のようないろいろな事件が起きて来るんですけども、ああいう子ども達ってきっと親の弱を知らないで苦労してるっていうか、親の弱さが見えない、大人の弱さも見えない、自分の孤独と弱さと大人の弱さが、こう。

田口:やっぱりお父さんの弱さなんですがね、なんか見えないんだね。

向谷地:そう。駄目さじゃなくてね。

田口:駄目さじゃなくて、弱さがね。うん。

向谷地:自信を持って弱さを語れるっていうか、伝えられるっていう事があんまりないみたい。ちょっとでもその中ではささやかですけどもこの個人情報保護の時代にむしろ私達は積極的に弱さの情報公開を呼びかけてるっていうね、まぁそれが一つの人の繋がりを取り戻す大事な仕事かなって思います。

田口:うん。そうですね。

下野:あの向谷地さんとランディさんの話に途中でついていけなくなってぼーっとしてたんですけど。

田口:いかんね、下野君がついていけない話をしちゃね。

下野:あぁ、難しいですね、やっぱりね。

田口:反省、反省。

■ それでも現実を生きようとする当事者を信じる

向谷地:これからは、フロアのみなさんと対談というか交流をしたいと思うんですけど、いかがですか。

客:あの、始めのほうに信じるっていう事を話してましたよね。その辺をもうちょっと詳しく話していただけますか?

向谷地:信じ方っていうのは、浦河は様々な良い条件の下にべてるの家の活動は育まれなんじゃなくて、二重三重の悪条件の下に育まれたものなんですね。
私は、全国に何千の教会があるんですけども、その教会には牧師さんがいてその教会に集う人たちがいて、実はそこには沢山の精神障害を抱えた人たちが集っている。今まで私はあまりそこにメッセージを送ってこなかったなっていう感じがあったものですから、今回いのちのことば社の人にお願いして、本を作ったんですけども。
これは決して教会だけじゃないんですけども、そういう自分がひとつの課題に直面した時に、やはりそのことにどう向き合うかっていうのは、それが上手くいけばあぁ良かったと思うし、やっぱり上手くいかなければ落胆するし、自分の無力さを味わうわけですね。でも私達はどっちかというと成功と失敗ということ二者択一的な現実でなくて、考えたらむしろ上手くいかない事の方が多いんじゃないんですか、私たちの現実の中では。
ですからそれは私はこの仕事をするひとつのスタンスとして、やはり病院ですから多くの人たちは私たちが力を注いだにも関わらず亡くなっていく方も沢山いる、そして不思議な事にその人たちが亡くなっていっても私達はそこに力を注げば不思議に私たちの中に満足感が残ってしまうわけですよね。そういう中で私たちは目先の成功であるとか上手くいったとか成果っていうものに捉われないこう眼差というものを私は取り戻す必要がある。それは、簡単に言えばひとつの信じ方ってことなんですね。
その信じ方っていうのは、そういう意味ではひとつの現実に自分が向き合う時の立ち方とか、構えとか、眼差しと言って良いんでしょうか。仮にホントに失敗だらけの人生で結局お酒に飲まれて死んでいった人たちが沢山いるわけですよ。そういう人たちの人生でもその人たちが生きている間に、そして私たちの記憶の中に残り続けて行く中で私たちにもたらしているもの、そういうものをなんとなく信じたいなぁという信じ方かな。いろいろな信じ方になると思うんですけど、目の前にあることが困難であればあるほど、私たちはむしろ先取りした信じ方っていうものをする。
その先取りした信じ方っていうのは、決してこの人も上手くいくだろうなっていう期待ではなくして、この人もこういう事を繰り返しながらこの現実を生きようとしているんだなっていう信じ方、そういういろいろな信じ方があります。そういうことを織り成して、そしてやっぱり駄目だったね、やっぱり大変だったなって思う時は、最後はもう笑うしかないよなぁみたいな。まぁいろいろな信じ方があります。
浦河はすごいいろいろな病気を抱えた人たちが様々な事で出会ってそこで会社を作ったり、わいわいやっています。そういう意味で鍛えられる場所です。で、これは過疎という町から捨てられたひとつの試みであるということ、ということは日本の中でも面白い実験じゃないかなと思っています。





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『べてるの家から吹く風』(いのちのことば社)
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