向谷地:今日一人の高校生が病院で処方された薬で苦労していて、家族共々相談に来るということがありましたが、今回はいわゆる薬をめぐっての、病気を抱え行き詰まってる当事者の側と治療者の側との世界観の違いが見えたなと思いましたね。
川村:今日は16歳の少年が来たんですけど、これはいつも共通に感じることだけど、浦河では、薬をたくさん使っている地域よりも一生懸命治そうとしてないなと。問題に向き合うスタンスが最初から違ってるなと。僕はここで助けられてる感じが最初からしてるから、あまり力まなくていい。そこが違う。今日の少年も、医者がその少年や家族の抱えている問題を医者の力で何とかしてあげようという、それは間違いなく善意なんだけど、何か肝心なところが違うなと。それが、薬に対する力みになって、僕らだったら絶対に使わないような薬を長年飲んでしまって、結果的に怠いとか眠いとか、本当に気の毒だと思ったね。
向谷地:その少年も、もともと家族の苦労を抱えていて、中学生になって自分の将来のこととか、家族のことを深く思ったり考えたりする力が本人のなかにつきはじめたとき、不安になったり、家族と衝突したりという本人の中のドラマを専門家がどう受け止めるかという問題がありますよね。
川村:私たちが聞くと「それいいね!」とか「すごいね!」ということが、一方ではそれはあってはいけないことだとされて、薬で抑えられているような。その少年とも、初診だったから、たった30分間だけ話したの。30分話をするというのは、僕らのなかでは短い方だなと思うけど、彼はその辺に気を使って「もう30分も話してますけどいいんでしょうか?」って(笑)。だけど、「あたなに必要なのは、薬ではなくてこうやって話をすることなんですよ」ということを彼はセンスよく受け止めていてね。自分に今まで無かったのは、こういった場や時間だということを受け止める力が本人にちゃんとあるんだよね。
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