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2012. 02. 03(金)
「当事者研究」の到達点とこれからの展開 その2
北海道医療大学 向谷地生良
● 当事者研究の理念と定義
最初に、先にも述べたように、まずお断りしておきたいことは、当事者研究にはマニュアルがなく、「当事者研究の権威」と言われる人も存在しない。その中で、全国各地から新たな切り口の「研究テーマ」と、「当事者研究」の研究実績が続々と集まり、それらの「英知」を集めた当事者研究を紹介するスライドも更新を続けており、ここ5年間を振り返っても110回の書き換えを行い、スライド数も1300枚を越えている。そのように、全国各地の当事者研究の現場から生み出される新しい知恵と経験が、当事者研究を深化(進化)させ、磨きあげているのである。
1)当事者研究とは
当事者研究とは、統合失調症などを持ちながら地域で暮らす当事者の生活経験から生まれた自助?を助け、励まし、活かす?と自治(自己治療・自己統治)のプログラムである。そこで大切にされていることは、当事者自身が生活していく中で出会うさまざまな「苦労の主人公」になることである。
精神障害をかかえた人たちの困難とは、精神疾患による直接的な苦痛や辛さではなく、当事者自身と、当事者を取り巻く人間関係も含めた内的外的な環境によってもたらされる部分の方が大きい。その典型が、過剰な保護や管理、過剰な投薬であり、当事者自身のニーズよりも、周囲のリスクの軽減を重んじるかかわりが中心となり、結果として長期入院をもたらす要因となってきた。そのような中で、浦河の回復者クラブ活動は、「当事者主権」1)という言葉に象徴される70年代の自立生活運動の伝統を受け継ぎ、他者に管理、保護される暮らしよりも、むしろ一人の人間としての正当なリスクを求めることを重んじてきた。それが、自助?自分を助け、励まし、活かす?と自治(自己治療・自己統治)の伝統を育んできた。そして、このような人生観は、遡るならば、フランクルの実存分析でいうところの「苦悩の意味?苦悩において成熟し、苦悩において成長するのであり、苦悩はわれわれをより豊かに且つ強力にしてくれる」2)にも通じるものがある。
(つづく)
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